共産党宣言12 古典の修行  

労働者の発展段階① 分散・未組織


「プロレタリアートはさまざまな発展段階をとおる。ブルジョアジーにたいする彼らの闘争は、彼らの誕生とともに始まる」(48頁)。

労働者階級のあり方は固定的ではなく、「発展段階」があるとマルクスは言います。

まず、バラバラな段階で、「個々の労働者」→「ひとつの工場の労働者」→「一地区のひとつの労働部門の労働者」が、「個々のブルジョア」とたたかうようになります。

「彼らはその攻撃を、ブルジョア的生産関係に向けるだけではなく、生産用具そのものにも向ける」(同)。

機械の普及が仕事を奪うことをおそれて、機械を破壊しました。イギリスで起きたラダイト運動が有名ですが、それ以前にも機械打ち壊しはありました。

ラダイト

ラダイト運動について次のような説明を見つけました。

第1次産業革命により織機の機械化が進み、水力や蒸気機関を動力源とする紡績機が現れ、多くの労働者は職を失いました。技術革新による機械導入が高賃金の熟練労働者の失業と、不熟練の労働者の酷使や深夜までの労働等の労働環境の悪化を生んだと考えた労働者たちは、機械や工場建築物を打ち壊す行動に出ました。ラッダイト運動は単なる《打ち壊し》運動ではなく、労働環境の改善を求める労働者と経営者の集団交渉の形態の一つであったと言えます。

英国はこのような行動に対して最高刑を死刑とする法律を制定しましたが、ラッダイト運動は民衆の支持を受けていたため、打ち壊しは止められず、1811年から1817年の長期間にわたって続き、打ち壊しにより工場や機械破損の被害や、多数の死傷者や逮捕者が出る結果となりました。


 上手にまとめています。

「第1次産業革命とラッダイト運動」というコラムなのですが、何に出ていたのか。なんと、2016年版の『国土交通白書』、作ったのはもちろん国土交通省です。この年の特集が「イノベーション」=技術革新で、技術革新が何をもたらすのか、歴史を振り返るコラムだったんですね。

機械や機械化というイノベーションが悪いわけではないのですが、自分たちの労働条件の悪化に対して立ち上がり、そのほぼ最初の抵抗が「機械打ち壊し」だったわけです。

この段階における労働者は「競争のために分裂している《集団》」です。

「多数の労働者がいっしょにまとまることがあっても、それはまだ労働者自身の団結の結果ではなく、ブルジョアジーの団結の結果」にすぎません。

労働者は、資本(家)によって集められ、彼らの政治的な運動に引き入れられます。

「こうして歴史的運動はことごとくブルジョアジーの手に集中され」、その「勝利はすべてブルジョアジーの勝利である」(49頁)。

ここまでが第一段階です。

労働者の発展段階② 力の自覚


「だが、工業が発展するにつれて、プロレタリアートの人数がふえるだけではない。彼らはよせあつめられて、いっそう大きな集団となり、彼らの力は増大し、そして彼らは自分たちの力をますます自覚するようになる」(同)。

労働者が増え、彼らの「分業と協業」とが機械と結びつけられることによって、それまでにない巨大な生産力を生み出しました。

「彼らの力は増大し、そして彼らは自分たちの力をますます自覚するようになる」。

トム・パクストンの「橋をつくったのはこの俺だ」(高石ともや日本語詞)という歌があります。

♪橋をつくったのはこの俺だ
 道路をつくったのもこの俺だ
 強いこの腕と身体で
 この祖国をつくったのは俺たちだ

 

 橋をつくり、道路をつくり、工場を動かしているのは、社長さん(資本家)ではなく、自分たち労働者であることが、だんだん分かってくる。

その一方で、「機械が労働の差異をますます消滅させ、また賃金をほとんどどこでも一様に低い水準におしさげるので、プロレタリアート内部の利害、その生活状態は、ますます平均化してくる」(同)。

暮らし向きが「平均化」してくるとその意識も「平均化」していきます。

労働者の賃金は景気や技術革新によって翻弄され、「生活上の地位全体がますます不安定になる」(同)。

個々バラバラだった労働者のたたかいは、だんだんまとまりをみせてゆきます。

「労働者はブルジョアに対抗して同盟を結びはじめる。彼らは、その賃金を維持するために結束する」(50頁)。

競争に勝ち抜こうとしたり、バラバラに文句を言っているだけでは事態は動かない。労働者だけでさまざまな申し合わせをし、「これ以上、賃金を下げられたら仕事をほっぽりだす」と決めたりするわけです。

「こういうときおりの反抗にあらかじめそなえて、永続的な結社さえつくる」。

この「永続的な結社」が労働組合の源流です。みなでお金を出し合って、誰かがケガや病気をしたときの見舞金にする。仕事を放棄したときの賃金を補うための基金にする。こういう助け合いが始まるのです。

「ときどきは労働者は勝利するが、それは一時の勝利にすぎない。彼らの闘争のほんとうの成果は、その直接の成功ではなく、労働者の団結がますますひろがってゆくことである」(同)。

賃金が上がる、労働条件が改善することはあります。最近はありませんが…。マルクスは、そういう直接的な成果より大切なことがある。

それは労働者の団結が広がること。労働者が、自らを組織に結びつけ社会的な勢力となることである、と言っているのです。



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