☆以前、服部文男訳で『共産党宣言』を読んだとき、「(労働者)は、その時々の反抗にたいして食料を準備するために、永続的な結社をさえつくる」という一文が目に留まり、どのような実践が念頭にあったのか、興味を覚えました。
イギリス1830年代のグランド・ナショナルは短命に終わった労働組合ナショナルーセンター運動ですが、土地を借り入れ、また作業所をつくって生産活動をおこなう、食料・家庭用品を集配所で安価に提供するなど、生産・消費協同組合的構想を持つものでした(浜林正夫「グランド・ナショナルの崩壊」)。
☆『党宣言』がなぜ「食料準備」を特筆したのか――現在の食料支援活動には、喫緊の対応からヒューマニティの根源に迫るものとなる可能性や必然性があるように思います。
Sie stiften selbst dauernde Assoziationen, um sich für die gelegentlichen Empörungen zu verproviantieren. Stellenweis bricht der Kampf in Emeuten aus.
該当の箇所は、英文では、
the workers begin to form combinations(Trades’Unions) against the bourgeois; they club together in order to keep up the rate of wages; they found permanent associations in order to make provision beforehand for these occasional revolts. Here and there, the contest breaks out into riots.
とあり、そのなかの、in order to make provision に注目しました。provision には《蓄え、食糧、食料》という意味があるので、服部訳には根拠があるように考えました。他の訳業でも、的場昭宏『初版ブルクハルト版 共産党宣言』(作品社)で〈労働者は時々の抵抗のために食料を蓄積する長期的なアソシアシオンをつくる〉(52頁)とした例がありました。
「奥付から判断すると、1970年の向坂の《改訳に際して》では紙型が磨滅したと書いてあるので、改訳と改版がここでおこなわれた(このときは活字組みで)。その後版を重ねたが、また紙型が磨滅したので、2007年に電算写植で組み直し=「改版」した――ということになりそうですね。
ですから、訳文をいじる機会は70年(刊行は71年)のときに1回だけ、「食糧」が入ったのはこのとき、ということになる」
Author:二見伸吾 FUTAMI shingo
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広島県労働者学習協議会 講師
ヒロシマ総がかり実行委員会世話人
府中町議会議員(日本共産党)
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